キューバはラテンアメリカの映画大国であるブラジル、アルゼンチン、メキシコには及ばないものの、域内では映画制作が盛んな国の一つである。革命前のキューバの映画産業は脆弱なものだったが、1959年に映画芸術産業庁(ICAIC)が設立されて以来、キューバ独自の映画への取り組みが始まった。ラテンアメリカ初の映画学校が開設されたのもキューバであり、1986年にハバナ国際映画テレビ学校(EICTV)が設立されてからはガルシア・マルケスを筆頭にラテンアメリカ最高峰の人材が映画製作を教えている。
著名な映画人としては、イタリアのネオレアリズモに影響を受け、ブラジルのネルソン・ペレイラ・ドス・サントス、アルゼンチンのフェルナンド・ビッリと共に新ラテンアメリカ映画運動の火付け役ともなった『エル・メガノ』(1955年)のフリオ・ガルシア・エスピノーサや、『ルシア』(1968年)のウンベルト・ソラス、『低開発の記憶』(1970年)、『苺とチョコレート』(1993年)のトマス・グティエレス・アレア、『永遠のハバナ』(2003年)のフェルナンド・ペレスが挙げられる。